2025年度「シンガポールリハビリテーション研修」を実施しました!
2025年度シンガポールリハビリテーション研修/Study Visit to SIT
シンガポールの「Singapore Institute of Technology(以下SIT)シンガポール工科大学」において、2025年9月11日(木)から9月20日(月)までの10日間の日程で海外研修を実施しました。
東京理学療法学科2年生2名、作業療法学科7名(1年生2名、2年生2名、3年生3名)、柔道整復学科4年生1名の学生10名が、SIT保健・社会科学部(Health and Social Sciences Cluster)を訪問し、シンガポールのリハビリテーションについて学び、異文化への理解と視野を広げる貴重な機会となりました。
概略
研修期間:2025年9月11日(木)~ 9月20日(土)
受入れ機関:シンガポール工科大学(SIT)保健・社会科学部(Health and Social Sciences Cluster)
参加学生:10名(東京理学療法学科2年生2名、作業療法学科7名(1年生2名、2年生2名、3年生3名)、柔道整復学科4年生1名)
引率者:教職員2名
スケジュール
出発日 9月11日(木)
シンガポール航空 637便 成田空港発 11:10発 シンガポール着 17:20着
帰着日 9月20日(土)
シンガポール航空 638便 シンガポール発 23 :55発 成田空港着 翌朝08:00着
9月11日(木) 出発・シンガポール到着
前日は、全員が成田空港近くのホテルに宿泊しました。
朝8:30に全員で成田空港へ向かいます。
いつも晴れている印象のシンガポールですが、この日はあいにくと雨でした。
ホテルにチェックインした後、全員で歩いて15分ほどにある、「ペーパーチキン」で有名なレストランへ行き、夕食を楽しみました。
9月12日(金)AM オリエンテーション
今回の研修プログラムは、シンガポール工科大学(Singapore Institute of Technology, SIT)にて実施する、初めての研修となります。
オリエンテーションでは、SITの概要について学びました。 SITは、シンガポール初の「応用学習型大学(Applied Learning Pedagogies)」として設立され、学術的な知識とスキルを産業界と直結させた学位プログラムを提供しています。
即戦力として活躍できる専門職を育成する点が特色です。 現在、学部学生数は約10,000名にのぼり、シンガポール第5の自治大学(Autonomous University; AU)として高等教育を担っています。 その中でも、保健・社会科学部(Health and Social Sciences Cluster)は約1,900名の学生を擁する大規模な学部であり、シンガポールにおける理学療法士(PT)および作業療法士(OT)の唯一の育成機関として重要な役割を果たしています。
9月13日(土)、14日(日) 市内観光
週末の2日間は、市内観光を満喫しました。 シンガポールを代表する観光地をほとんど巡ることができました。 夜には、マリーナベイ・サンズの美しい夜景や光のショーを鑑賞し、迫力あるイルミネーションに魅了されました。マーライオン公園では、多くの観光客に混じって写真を撮影し、シンガポールならではの雰囲気を満喫しました。
また、チャイナタウンやブギス・ストリートなどの繁華街を散策し、雑貨やお土産を見て回る時間もありました。
多彩な文化が入り交じるシンガポールならではの活気を肌で感じることができました。
さらに、アラブストリートやカトン地区など、街ごとに異なる文化的背景をもつエリアを訪れ、国際都市の魅力を実感しました。
都市国家シンガポールのダイナミックさと多様性を体感し、短期間ながら非常に充実した時間を過ごすことができました。
9月15日(月)AM OT学生「講義:Daily Living Skills」
SITのOTの学生に混じって、授業を受けました。
印象的だったのは、学生主体の参加型授業のスタイルです。
グループごとにディスカッションを行い、リアルタイムで答えが教授にを導き出す形式が取り入れられていました。答えが的確でない場合には再度考える時間が与えられ、自分たちで解決策を見出すことが求められます。最後には先生から解説があり、学生たちは自分たちの考えとの違いを真剣に確認していました。
このような主体的に学ぶ授業スタイルは、日本ではあまり見られないものであり、「考える力」を重視する教育を強く感じることができました。今回の体験は、学び方そのものを振り返る大きなきっかけとなりました。
9月15日(月)AM PT・柔整学生 SG City Galleryの見学
PT・柔整の学生たちは Singapore City Gallery(シンガポール・シティギャラリー) を訪問しました。 シティギャラリーは、都市国家シンガポールの発展の歩みや都市計画を学ぶことができる展示施設です。巨大な都市模型やデジタル展示を通じて、都市づくりの工夫や持続可能な社会に向けた取り組みをわかりやすく知ることができます。
学生たちは、緻密に再現された街の模型を前に、興味深そうに見学していました。
限られた国土をいかに有効活用し、緑化や交通網を整備しているのかを学びました。
9月15日(月)PM シンガポール国立博物館の見学
午後は、全員でシンガポール国立博物館(National Museum of Singapore)を見学しました。 博物館では、シンガポールの歴史や文化を多角的に学ぶことができ、建国の歩みや多民族国家としての成り立ちを知る機会となりました。 展示室では、古地図や当時の生活用品、そして戦争の記録などが紹介されており、日本とは異なる歴史的背景に触れながら、シンガポールの人々がどのように社会を築き上げてきたのかを深く学ぶことができました。
また、館内では最新の映像技術や体験型展示も取り入れられており、ただ「見る」だけでなく「感じ、考える」学びを得ることができました。
9月16日(火)AM OT学生「SITのOT学生の日常の共有」
SITの作業療法(OT)の学生たちが、普段どのように学び、どのように臨床実習に取り組んでいるのかを紹介してくれました。 発表では、授業の進め方や学習環境、実習先での経験など、学生生活のリアルな様子が語られました。特に、シンガポールの医療・福祉現場における作業療法士の役割や、実習中に患者さんとどのように関わっているかについての具体的な話は、大変参考になりました。
共有を通して、日本とシンガポールの教育や臨床実習の違いを知り、作業療法の専門職を目指すうえで必要な姿勢を改めて考えるきっかけとなりました。
9月16日(火)AM PT・柔整学生「講義:運動器理学療法」
午前中は、SITの学生たちと一緒に Musculoskeletal Physiotherapy(運動器理学療法) に関する講義を受けました。
講義では、臨床面接のシミュレーションを通じて、患者からどのように情報を引き出し、臨床推論に結びつけるかという流れを学習しました。また、「腰痛患者に対する身体診察の計画」「クリティカルシンキングを活かした臨床推論」「患者に分かりやすく専門的に説明する力」など、理学療法士として必要なスキルが強調されました。 SITの多くの学生と混じっての受講は大変刺激的であり、異なる学習環境の中で自分の知識や姿勢を振り返る貴重な機会となりました。
9月16日(火)PM Rainbow Centerの見学
午後は、シンガポールの Rainbow Centre(レインボーセンター) を訪問しました。 Rainbow Centre は、発達障害や知的障害をもつ子どもたちとその家族を支援する教育・療育機関で、シンガポール国内に複数のキャンパスを展開しています。
学校教育だけでなく、作業療法・理学療法・言語療法などを組み合わせながら、子どもたちが自分らしく学び、地域社会で生活できるようサポートしているのが大きな特色です。 施設では、最新の教育設備やセラピー室を実際に見学し、教員やスタッフの方々から具体的な取り組みについて説明を受けました。子どもたちの個性や発達段階に合わせた教育プログラムの工夫や、専門職がチームとなって関わる姿勢に、多くの学びがありました。
Rainbow Centre の取り組みを知り、大変貴重な経験となりました。
9月17日(水)AM MINDS(シンガポール知的障害者協会) の見学
MINDS(Movement for the Intellectually Disabled of Singapore) を訪問しました。 MINDS は、知的障害を持つ方々の自立と社会参加を支援する団体で、教育・就労・生活支援の幅広い取り組みを行っています。 見学では、利用者の方々がさまざまな作業に取り組んでいる様子を拝見しました。
たとえば、シンガポール航空に納品している機内用イヤホンの組立や、パンの製造などの実習を通じて、就労支援につながるスキルを学んでいました。
また、地域の方々から寄付された中古品を販売するリサイクルショップの運営も行っており、地域とのつながりを大切にしながら活動していることが印象的でした。 こうした取り組みは、単に職業訓練という枠を超え、社会の中で自分らしく役割を持ちながら生活できるよう支える仕組みであることを実感しました。障害者支援の現場を肌で感じる貴重な機会となり、多様な社会のあり方について深く考えるきっかけとなりました。
9月17日(水)PM Kwong Wai Shiu Hospital の見学
午前中はKwong Wai Shiu Hospital(広惠肇留病院) を訪問しました。 この病院は、伝統的な中国医学と現代の西洋医学を組み合わせて治療を行っている点が大きな特色です。
診療現場では、西洋医学に基づく診察やリハビリと並行して、漢方や鍼灸といった東洋医学の知見を活かしたアプローチも取り入れられており、統合的な医療を実践している姿を見ることができました。
9月18日(木)AM Khoo Teck Phuat Hospital 見学
シンガポール北部に位置する Khoo Teck Phuat Hospital (KTPH) を訪問しました。 KTPH は「緑の病院」と呼ばれるほど環境に配慮した設計がなされており、病棟内でも自然の風の流れを計算し、エアコンに頼らずとも涼しく快適に過ごせるよう工夫されていました。
集中治療室(ICU) や 一般病棟 に入り、実際の病棟設計や運用を間近に見ることができました。また、リハビリテーション施設 も充実しており、患者の回復を支える幅広いプログラムが整えられている点が印象的でした。 医療技術と環境デザインが融合した病院の姿は、日本ではなかなか見られないものであり、医療の未来を考える貴重な学びの機会となりました。
9月19日(金) AM 学習のまとめ
研修の最終日となるこの日は、これまでの学びを振り返る「まとめ」の時間が設けられました。
まず、「この交流で最も貴重で印象的だったことは何か」、「学業面や文化面、日常生活でどのような困難に直面し、どのように対応したか」、「シンガポールでの経験を日本に持ち帰り、どのように周囲と共有していくか」といった問いが投げかけられ、学生たちはグループごとに意見を出し合いました。 話し合いの中では、医療制度の違いや多文化社会でのコミュニケーションの工夫、実際に現場を体験したからこそ得られた学びなど、さまざまな視点が共有されました。さらに、英語を使うことへの自信や、自ら積極的に行動する姿勢を得られたという声も多く聞かれました。 最後に、それぞれがこの研修で得たことを日本でどのように活かしていくのかを考える時間となり、自分自身の成長を再確認する機会となりました。
9月20日(日)PM シンガポール出国前
午後は16時にチャンギ国際空港へ向かいました。 少し早めに到着したため、空港内の複合施設「ジュエル(Jewel Changi Airport)」で過ごす時間がありました。 ジュエルの中心には、世界最大級の室内滝「レイン・ボルテックス」があり、ライトアップされた幻想的な光景を楽しむことができました。また、空港ならではの充実したショッピングエリアでは、最後のお土産を購入したり、カフェでゆったりとした時間を過ごしたりと、出発前のひとときを満喫しました。 旅の締めくくりにふさわしい、印象的な空港での時間となりました。
本学の学生たちからは、次のような声が寄せられました。 「シンガポールの文化や医療制度を知り、日本との違いを肌で感じることで、多様な価値観を受け入れる大切さを学ぶことができました。」 「英語での会話は不安もありましたが、ジェスチャーや工夫を重ねるうちに、伝わる喜びや積極的に話す楽しさを感じることができました。」 「異国での学びを通じて、視野が広がり、自分の学び方や将来の進路について真剣に考えるきっかけとなりました。」
これらの言葉からも、海外で学ぶ経験が学生にとってどれほど大きな財産となるかが伝わってきます。 一人でも多くの学生がこの貴重な機会を活かし、世界を舞台に学びや交流を深め、自らの可能性を広げていってほしいと願っています。
